――4月25日(土)
――
教室
――
シキネ「あー終わったー」
白石「オッスオッス」(真顔)
シキネ「帰るかー」
しゅんじ「オッスオッス」(真顔)
受験生は補習やらなんやらで土曜日にも学校があるのです。
――
商店街
――
シキネ「お前ら志望校決めた?」
白石「国立か私立にする」(真顔)
しゅんじ「私立か国立だな」(真顔)
シキネ「……じゃあ俺は公立にしようかな」
まるで受験の実感が持てていない高三の春。
――こんなことでいいのだろうか。
――まあ、よくないか。
白石「ちょっとコンビニ寄るわ。サンドイッチ買うわ、ハムのやつ」(真顔)
シキネ「そうか」
しゅんじ「じゃあ俺も行く、タマゴのやつ買うわ」(真顔)
シキネ「俺はここで待っているよ」
白石としゅんじは仲睦まじく入店していった。
白石「なんで……タマゴなんだよ」(真顔)
しゅんじ「いいだろ……別に……」(真顔)
白石「教えろよ……」(真顔)
しゅんじ「すっ……好きなんだよ……」(真顔)
なんだあいつら。
――キイィ
チカ「……」(デフォ)
あ……チカちゃんだ。
可愛いツインテール。結構高めの身長。なんか眠たそうな目。
間違いない。チカちゃんだ。
シキネ「……」
チカ「……」(デフォ)
でも声をかけることはできなかった。
だって向こうは俺だと気づいているのか怪しいし……。それにたぶん嫌われているし。
チカ「……」(デフォ)
――スタスタ
……去って行った。でもすごいよな、あの子。あれで天才なんだから。なんで同じ学校に通っているんだろう。あ、コミュ障だから彩里さんがいないとダメなのか。いやでも彩里さんにしたって天才の部類だと思うんだけどなあ。彩里さんがテスト苦手タイプなのかな?
白石「オッス」(真顔)
シキネ「おう」
しゅんじ「……」(真顔)
シキネ「どうしたの、変な顔。いつもと同じだけど」
しゅんじ「俺も……ハムのやつにしちゃった……」(真顔)
シキネ「はあ……」
しゅんじ「白石がさ……へへ」(真顔)
白石「なんだよ気持ちわりいな……美味いぞ、ハムのやつ」(真顔)
しゅんじ「へへ……」(真顔)
――まあいいか。
シキネ「これからどうする?」
白石「13時の電車で帰るか、ちょっと寄り道するかって感じだろ」(真顔)
しゅんじ「ジム行こうぜ」(真顔)
シキネ「本屋行かない? なんか単語帳探そうかと思っててさ」
白石「いいね、行くか、春陽館」(真顔)
しゅんじ「ジムはダメか……」(真顔)
――
春陽館
――
エーコ「おっ」(驚き)
シキネ「あっ」
エーコ「シキネくんだー!!」(きゃは)
参考書コーナーで容姿端麗な女子高生がモデルの大きなポスターが貼ってあると思ったら園崎さんだった。
シキネ「園崎さんも寄り道?」
エーコ「そうそう、ちょっと赤本見ていこうかなって」(デフォ)
シキネ「園崎さんは志望校決まっているの?」
エーコ「んまあ……なんとなくここにしようかなっていうのはね」(苦笑)
シキネ「そっか」
エーコ「ほら、入試の形式もいろいろあるし、推薦とかAOとか、まだいろいろ悩めるし、私は大学に行って何をしたいとかが明確じゃないから『ここだ!』って感じはしないんだけどね」(苦笑)
シキネ「なるほどね……」
俺にもなんとなく行きたい大学はある。ヨココクとか、いい感じだよね。B’zの稲葉さんとかOBにいるしね。でもその程度だ、なんとなく行きたいだけ。横浜はなんかオシャレな街っぽいし、TVKが映るからsakusakuをリアルタイムで鑑賞できそうだけど……俺にはオシャレはわからないしsakusakuをリアルタイムで見る必要もあんまり無い気がする。
――つまり志望校なんて全然決まっていない。
だけど俺がこのように残念受験生であることはいったん置いておいても、さっきから少しだけ気になることがあった。
シキネ「ねえねえ、園崎さん」
エーコ「んー?」(なあに)
シキネ「真面目じゃね?」
エーコ「えっ」(きょとん)
園崎エーコさん。オーストラリア留学から帰って来た帰国子女風女子。スタイル抜群、顔が小さいウルトラファッキン美人。しかもダブっている一個上のお姉さん。ほとんど非の打ち所がない人だ。
でも彼女に難点があるとしたらちょっと騒がし過ぎるのと、あの……なんというか……アホなんじゃないの……というところだ。
[回想風]
エーコ「いけー、ロイヤルストーレートフラッシュもどきー!」(笑顔)
――
春陽館
――
そんな園崎さんが今日は何時になく大人しかった。
エーコ「私普段そんなに騒がしい?」(苦笑)
シキネ「心が読まれているっ??」
エーコ「そんな顔してる」(苦笑)
シキネ「騒がしいよね?」
白石「うん」(真顔)
しゅんじ「うん」(真顔)
エーコ「わー」(げー)
シキネ「うん」
エーコ「うーん……ほら、みんなといると楽しくなっちゃうというかね、えへへ。普段から元気いっぱいだったら疲れちゃうでしょ?」(苦笑)
シキネ「疲れちゃうのか」
エーコ「疲れちゃうよ」(デフォ)
シキネ「なるほど……夜通しは無理と……」
エーコ「へ……?」(きょとん)
シキネ「なんでもない! 続きはWebで!」
エーコ「ところで、シキネくんはどうなのよ」(デフォ)
シキネ「夜の話?」
エーコ「志望校の話!」(にか)
シキネ「……四年制の大学にしようかと」
エーコ「……後ろのイケメンたちは?」(きょとん)
白石「理系の学科がある大学にする」(真顔)
しゅんじ「学食がある大学だな」(真顔)
エーコ「じゃあみんな全然決まってないの?」(きょとん)
シキネ「なんという洞察力! 恥ずかしながらそうだよ!」
エーコ「ふーん」(ふーん)
しまった……園崎さんはボケキャラだからツッコミを期待して何も出て来なかった。出てくるとしたら「ふーん」だけだ。あ、でも「ふーん」もいいな。その薄めの唇から放出される「ふーん」を少し吸い込みたいぜ。
エーコ「シキネくん」
シキネ「はい生きててすいません」
エーコ「シキネくんも東ピョー大学目指しなよ」(きゃは)
シキネ「え、俺が東ピョー???」
――
――
東ピョートル大学、通称「東ピョー大学」つい四年くらい前に「目指せ日本のMIT! 目指せ日本のプリンストン高等研究所!」をスローガンに筑波大学のキャンパスを縮小し、いい感じの場所に国が新設した理学研究に特化した大学である。
要約すると「東大からいちいち筑波まで実験しに行くのダルいわぁ、TX妙に高いし」ということで筑波の広大な土地に建てられた大学らしい。
開設してからの評判は非常に良いようで、MITも夢じゃないとかなんとか。
そしてスウと彩里さんの志望校が確かここだった。
――つまりかなりレベルが高い。
――
――
シキネ「無理だろ」
エーコ「無理だね」(きゃは)
無理かパプリカどうかはまた別の話。

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