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あかほん! 第14話「俺の予想はたぶん正しい」

Posted by chloro2236 on 11.2012 あかほん! 0 comments 0 trackback
――5月7日(木)
――
教室
――

――俺の予想はたぶん正しい。

スウ「おはよー」(笑顔)

シオ「おはよー」(笑顔[開眼])

スウ「昨日のテレビ見たー?」(デフォ)

シオ「うんうん、見た見たー」(笑顔[閉眼])

 今朝も俺の隣の席でぷるるん女子トークが愉快に始まった。

スウ「NHKスペシャル」(デフォ)

シオ「リーマン予想、天才達150年の闘い」(笑顔[閉眼])

スウ「そうそう、面白かったー!」(笑顔)

 ぷるるん女子トークじゃなかった、ハゲタカ理系トークだった。

スウ「ああいう番組ってさ、あんまりやらないから楽しかったなあ」(笑顔)

シオ「スウちゃん的に内容はどうだったの?」(笑顔[開眼])

スウ「もっと勉強したくなったよ、まだまだわからないことだらけだ」(苦笑)

 スウにもわからないことがあるのか。え、わからないことだらけなの。

――じゃあ俺何なの?

シオ「あの、和が(π^2)/6になる数列がすごいと思った」(笑顔[開眼])

スウ「あれね、バーゼル問題って言って、オイラーさんが収束値を見つけたんだよ」(デフォ)

シオ「オイラーの公式の人だよね?」(きょとん)

スウ「そうそう」(笑顔)

スウ「ユークリッドさんから始まってオイラーさん、ガウスさん」(デフォ)

スウ「リーマンさんより後の時代の人はまだちょっと馴染みがなかったかな」(苦笑)

シオ「いろんな数学者がいたね」(笑顔[閉眼])

スウ「うん」(笑顔)

シオ「スウちゃんも将来は数学者になるんでしょう?」(笑顔[閉眼])

スウ「え、いや……そんなのまだわかんないよ!?」(焦り)

シオ「そうなの?」(きょとん)

スウ「うん……」(苦笑)

スウ「まだ自分にどれくらいの実力があるのか、どのくらい数学のことが好きなのか、いつまで好きでいられるのか、全然わかんない」(苦笑)

スウ「だから大学に行ってみて……試したい……」(真面目)

シオ「うふふ、いいね、応援するよ」(笑顔[開眼])

スウ「あはは、私もエミー・ネーターさんみたいになれたらいいんだけどね」(苦笑)

 ターミ・ネーターって言いたいけど我慢しよう。

シオ「数学者?」(きょとん)

スウ「うん、”女性”数学者」(デフォ)

シオ「女の人はやっぱり少ないの?」(きょとん)

スウ「やっぱね、あんまりいないみたい」(苦笑)

シオ「まあ……今でも理系分野って少ないもんね」(苦笑)

スウ「そこをいくとやっぱりシオのお母さんってすごいなあ。ばりばりと今でも一線で活躍しているんでしょう?」(うー)

シオ「……うん、そうだよ」(笑顔[閉眼])

スウ「すごいなあ」(うー)

シオ「……心から尊敬している」(儚げ)

……女子トークに戻ったかもしれないけれど……いや、女子トークじゃないな、これ。理系トークの範疇だ。
 しばらく二人の楽しそうでよくわからない話は続いた。

スウ「じゃあそろそろ教室戻るね」(笑顔)

シオ「またあとで」(笑顔[閉眼])

 談笑が終わるとスウは自分の教室へ戻って行った。

――俺の予想はたぶん正しい。
――そして俺はこの予想を証明したい。

 ゆるりと席を立つ。

シオ「……」(笑顔[閉眼])

 彩里さんがなんかこっちを見ている。

シキネ「今から人間観察に行くんだ」

シオ「……聞いてないよ?」(笑顔[閉眼])

――
廊下
――

 とにかく俺は教室を出た。目指すのは隣のクラス。園崎さんがまだ教室に来ていなければいいのだが……。

――
教室
――

 目立たないようにそーっと教室の中をのぞいてみた。お、まだ園崎さんは登校して来ていないようだ。

スウ「……」(デフォ)

スウ「……」(デフォ)

スウ「……」(デフォ)



――俺の予想:スウは友達が少ない。
――俺の予想はたぶん正しい。



スウ「……」(伏目)

 お、スウが机から何かを取り出した。

スウ「……」(デフォ)

 本だ。なんか、ハードカバーっぽい本だ。

スウ「……」(うー)

――パタン

スウ「……」(伏目)

 あ、結局閉じちゃった。「どうせもうそんなに時間ないしやっぱりやめよう」って感じかな。

スウ「……」(デフォ)

 今度はケータイを取り出した。メールチェックかな……メールは……?

スウ「……」(伏目)

――パタン

 着ていませんでした。

スウ「……」(つまらなそう)

スウ「……」(きょとん)

 あ、やばい。こっちに気づいたかな。そろそろ戻ろう。

――
廊下
――

エーコ「シキネくん、何してんの?」(きょとん)

シキネ「マルフォイ!?」

エーコ「うわあ、そんなに驚かないでよ」(驚き)

 やばい、見つかった。なんとか切り抜けないと!

シキネ「Oh yeah...I’m NINJA」

エーコ「……?」(きょとん)

シキネ「I’m fine」

エーコ「……うん、日本語でいいよ」(きょとん)

シキネ「じゃあ、またあとで」

 抜き足差し足忍び足でその場を凌いだ。

――
教室
――

シキネ「ふう……危なかった……」

シオ「よくわからないけど、今も十分危ないよ」(苦笑)

 とにかく、俺は俺の予想が正しいことを証明したい。さっき見た感じだと、予想通りスウは友達が少なそうに見えた。

――でも、証明ってどうやるんだろう?

 なんとなくではあるが、さっきのスウの様子を見ただけでは早計というか、俺の予想に十分な信憑性を持たせることはできないような気がした。

シキネ「これは……難問だ……」

シオ「どうしたの?」(きょとん)

シキネ「あのさ、ある予想をたてて、それが正しいことを証明したいときってどうすればいいのかなって考えていたんだ」

シオ「……?」(きょとん)

シオ「保健室……行こうか……?」(心配)

シキネ「すごいよ彩里さん、その気配り。一を聞いて十を知る。だけど今回はそれが仇になっているよ、彩里さん」

シオ「あは。へー、シキネくんもそんなこと考えるんだね」(笑顔[閉眼])

 彩里さんはきっと俺のことをだいぶしょうもない人間だと思っているのだろう。少し寂しくなったが、真っ当な評価だとも思えて、さらに悲しくなった。

シキネ「証明って数学の証明問題みたいな方法以外で何かやり方はあるの?」

 彩里さんは少し考える。

シオ「うーん、シキネくんが何を聞きたいのかはよくわからないけれど、論証の方法は大体同じなんじゃないかな」(ふーん)

シオ「どちらかと言えば論証したい対象によって論理の詰め方が変わってくるような気がする」(デフォ)

 ええと、いまいちよくわからない。

シオ「例えば……数学の定理の証明と物理法則の証明……というか検証はちょっと性質が違うと思う」(ふーん)

シオ「どんな予想を証明したいの?」(きょとん)

シキネ「ええと……」

――俺の予想:スウは友達が少ない。

シオ「……?」(きょとん)

シオ「くすくす、えー、なにそれ……おかしいよー」(苦笑)

シキネ「てへへ」

シオ「自明じゃん」(苦笑)

シキネ「えー」

……え、自明なの?

シオ「ジョークだよ」(笑顔[閉眼])

シキネ「なんだ、ジョークかあ」

シオ「うん」(笑顔[閉眼])

……ジョークに聞こえない。やっぱり、なんかこの人の笑顔は怖いや。

シオ「じゃあ、シキネくんはどうしてそんなことを予想したの? ほら、何も理由がないのにそんな予想を立てるのは変だよね?」(笑顔[開眼])

シキネ「ええと、そうだな……」

 少し考えを整理してみる。

シキネ「理由の一つ目は、いっつも彩里さんの席にやってくること。二つ目はスウが勉強会以外の友達と一緒にいるところを見たことがないこと。三つ目はスウがあまり積極的な性格ではないこと。こんな感じかな」

シオ「……くすくす」(苦笑)

シキネ「あと、四つ目はスウが数学の話をしているとき以外は楽しくなさそうなこと」

シオ「……くすくす」(苦笑)

シキネ「彩里さん、すごく笑っているね」

シオ「……だっておかしいんだもん」(苦笑)

シキネ「……そんなに?」

シオ「だってすごく的確だよ」(苦笑)

……スウよ、君の親友は君のいないところで君のことをくすくすと笑っているようだよ。

シオ「でもあんまりそんなこと言っちゃダメだよ、スウちゃん本人がいないところで勝手にこんな話をするのは不公平だから」(苦笑)

……スウよ、君の親友はやっぱりなんだかんだで君のことを思いやっているようだね。

シオ「まあいいや、とにかく、面白そうだから実際に調べてみよっか」(笑顔[閉眼])

……スウよ、でも結局調べるらしいよ。

――まあ、言い出しっぺは俺なんだから何も言えないか……。

シキネ「じゃあ、いろいろ教えてね」

シオ「まかせて」(きゃは)

 彩里さんは今回も元気いっぱい、とても楽しそうだった。
 そういうわけで、「チキチキ、スウの知己は何人いるの!?」企画が執行されるのはまた別の話。

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