――4月20日(月)
――
図書室
――
スウ「わからない……」(困惑)
シキネ「え」
スウ「教え方がわからない……」(うーん)
シキネ「わからないの?」
スウ「うーん」(うーん)
スウ「一つ思いついたけど……」(うーん)
スウ「でもかなり苦しい気がする……」(うーん[汗])
スウはルーズリーフに○を書いて繋げて、数珠みたいな輪っかと、ミミズみたいな曲線を書いた。
スウ「まずね、始めに言っておきたいんだけど、『接線』というものは微分を使って定義されるんだよ。だから、微分をすることで接線が求められるというよりは、接線は微分した結果といった方が適切なんだ」(デフォ)
シキネ「でも……」
スウ「でも、シキネが気になるのはきっと『接線のような直線がなぜ微分で導けるのか』ってことでしょ? 『接線の導き方』をどのように解釈すればいいのか、それをこれから説明するね」(デフォ)
シキネ「お……おう」
なんだか、もう帰りたくなってきたけどここは我慢しよう。
[数珠の図]

スウ「見て、こっちの数珠みたいな図の方。これが地球のモデル、○を並べて作った円だとするよ」
スウ「○のうち、二つだけを繋いでこの円の接線を引いてみて」
――二つだけを繋いで接線を引く。
うーん……。
シキネ「うん」
スウ「わかったかな?」
スウ「下から2番目にある○を基準としてみるよ」
スウは基準の点を塗り潰して●にした。
スウ「例えば、上から1番目の○と、この●を繋いでみたとする、あたりまえだけどこれじゃ全然接線じゃないね。なんというか……」

シキネ「お団子みたいだ……」
スウ「φみたいだ……」
スウ「まあ、こんな感じで●と他のいろいろな○を繋いでみよう」
スウ「そうすると何がわかる?」
シキネ「これなら俺にもわかる。下から1番目にある○と3番目にある○と繋いだときだけ接線っぽくなる」

スウ「それはつまり●の両隣にある○、最も近くにある○と繋いだときだけ接線が引けそうだということになるよね」
シキネ「うん」
スウ「両隣以外の○と繋げようとすると、○で作った円と交わってしまうからね」



スウ「それじゃ、次はこっちのモデル、○を並べて作った曲線」
[ミミズの図]

シキネ「なんだ、ミミズかと思ったよ」
スウ「ミミっ……まあ、ミミズでもいいけども……」
スウ「じゃあ、この図ではこの○に注目します」
スウはミミズの真ん中あたりにある○を黒く塗り潰して●にした。
スウ「それじゃあ今度はこの●の周りで微分してみるよ。●の名前をAとしよう」
シキネ「え、微分?」
スウ「このミミズ……の頭をXと名付けて、Aと線で繋げます。そしてXをどんどんAに近づけていきます」



シキネ「え、あれ、そういうことなの?」
スウ「XはAとは重なることが出来ないので『Aに最も近い右隣』まで来て止まります」
スウ「このとき……」
――AとXを繋いだ線は接線になっています。
スウ「さっきの例で説明したとおりね」(デフォ)
スウ「どう……かな……?」(苦笑)
――自分の頭の何かが構築される感じがした。
――あと少し。
――もう少し。
シキネ「もしかして、この○をもっとずっと極限まで小さくしてもっとたくさん並べたらさ……」
スウ「そう……」
――私たちがいつも見慣れている曲線になるよ。
スウ「逆に言えばこのミミズは曲線を大きな大きな倍率で拡大して見たものってことになるよね」
――その言葉を聞いて、自分の頭の中で「微分」が完成した。
――まだ何かが足りないかもしれない。
――余計な部品が挟まっているかもしれない。
――だけど、これでいったん完成だ、とそう思えたのだ。
俺はきっとこの言葉をこんなに噛み締めて言うのは初めてだと思う。
――「わかった」
――わかった気がする……。
シキネ「ある点AにXを限りなく、極限まで、これ以上近づけないすぐそばまで近づけていく。近づけてAとXを結ぶのが微分で、直線AXが接線……」
シキネ「……そういうことかな?」
スウ「おおー、伝わった」(笑顔)
スウ「言いたかったことが伝わったよ」(笑顔)
シキネ「本当? あってる?」
スウ「だいたいあっているよ」(笑顔)
「だけど補足」と言ってスウはまたペラペラと話し始めた。
――スウによると――
さっきの例ではわかりやすさのために曲線を○のような有限の要素の集合としたので基準の点Aに「最も近い点を決めることができた」。だけど、普通俺たちが微分で扱う実数の世界では、実は「最も近い点を決めることができない」らしい。この違いから計算方法も前者と後者で異なることになる。前者の方を「差分法」と言い、後者の方を「微分法」という。前者のようによく見ると連続していない世界を「離散的」だと言い、後者のような世界をそのまま「連続的」であると言う。実数の世界は連続的ってことでみんな納得しているらしい。
離散的な世界ではAに「最も近い点を決めることができる」、一方で連続的な世界ではAに「最も近い点を決めることができない」、これはどういうことなのか? 整数の世界は離散的である。だから例えば『0に最も近い整数は?』という問題が出されたとき、誰もが簡単に『1と–1』と答えることができる。だが実数の世界ではそうはいかない。『0に最も近い実数は?』という問題が出されたとき『1』と答える人はまずいないだろう。1よりも1/2の方が0に近いし、1/2よりも1/3、1/42、1/5000……と、いった具合である。どんなに0に近い実数を見つけることができても、すぐにそれよりさらに近い実数が見つかる。どれが一番近いのかを決めることはできない。
これと同じようなことが微分でも起こっている。数珠の例のように最も近くにある点と結んだときにだけ接線はできるが、連続的な世界ではその点を決めることができない。だから極限をとる。
シキネ「そうか……XはAと同じと見なして計算できるくらいにAに近づくんだけどAとは違う点なんだね。だから二つの点を結んだ直線、つまり接線が決まるのか」
スウ「そう、二点は重なってないの」(苦笑)
そのあともスウは「でもシキネの極限の捉え方がまだちょっと甘い」とか言って、「『同じと見なす』というよりは『同じ』なんだけどそれは目標地点の話だから……」とかなんとかつらつら言っていたが俺の頭は既にパンク状態だったので何を言っているのか全然わからなかった。全然わからなかったけど……微分のことはわかった。
――そう、「わかった」のだ。
なんだろう、この感覚は。「嬉しい」とか「喜び」とかとは少し違う。「満足感」、「達成感」、なんだろう……? よくわからないけれどそれは自分にとって新鮮な感覚だった。
なんだかソワソワが収まらなくって、机の上の紙にたくさん描かれたの曲線の一つをなんとなしに人差し指でなぞってみた。
――こつん
何かとぶつかった。スウの指だ。彼女も反対方向から曲線をなぞっていた。
スウの小さくてしなやかな人差し指。
スウ「私の指とシキネの指、重なっていないけどくっついていて、ほとんど同じ場所にある。そちらを目指して限りなく近づくけど私の指はシキネの指のいる場所にはいけない」
ドキッとした。だけどきっとスウは数学に夢中でそんなことは特に気にしてないだろう。
饒舌モードで数学を語る彼女はどこか数学そのものに似ていた。美しい。
しかし、スウの言葉には少し寂しさを感じてしまった。
例えば人を好きになって、どんなにその人と近づきたいと願っても、その人になれるわけではない。あくまで、最も近い他人でしかない。
他人のことはわからない。だからこそ、知りたくなるのだろう。自分から見て彼女はどのあたりにいるのか、どのくらい離れているのか、どんな人なのか、知りたくなるのだろう。
スウ「……」(デフォ)
シキネ「……」
――もっと君のことが知りたいな、せっかく、こんなに近づけたのだから。
コッコ「お待たせしたわね……ってあら……」(きょとん)
コッコ「あらあらあら……お二人さん……私のいない間に……」(にやにや)
スウ「へっ……こっ、これはっ……!?」(慌て+紅潮)
そして俺が次の電車も逃すかどうかはまた別の話。

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「微分のおはなし」の参考図書
結城浩さん著「数学ガール ゲーデルの不完全性定理」
あともう一つすごくためになった本があったんですが思い出せないですすいません。
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まあそういうわけで例のごとく、壁紙を作ったので皆さん使ってみて下さい。
ほら、なんとなくオシャレな気がしなくもないでしょう?

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それでは引き続き頑張ります。
――4月20日(月)
――
教室
――
エーコ「今週は私ちょっと行けないかもー」(てへぺろ)
シオ「私、今日は委員会があるから行けないや」(残念)
チカ「お姉ちゃんがいないなら私も行きません」(デフォ)
白石「俺、今日しゅんじんち行くから」(真顔)
しゅんじ「俺の筋肉ドライバーで……」(真顔)
――それがさっきのこと。
コッコ「私たち、三人になっちゃったけど?」(伏目)
スウ「うう、女子三人は仕方ないとして、白石くんと筋肉はなんなの?」(呆れ)
シキネ「いや、筋肉ドライバーが……」
コッコ「それじゃ仕方ないわよね?」(デフォ)
スウ「仕方ないの!?」(驚き)
シキネ「俺もそんなことはないと……」
コッコ「アナタたち、よくもそんなに筋肉ドライバーをないがしろに……! って今重要なのはそんなことじゃないわね」(むっ→伏目)
スウ「勉強会の雲行きが……」(呆れ)
シキネ「どうする? 勉強していく?」
コッコ「今日は解散でいいんじゃないかしら?」(デフォ)
スウ「そうだね……あんまり何をしていいかわからないし……」(苦笑)
シキネ「……あ!!」
コッコ「何かしら?」(デフォ)
スウ「どうかした?」(デフォ)
シキネ「電車逃した……」
コッコ「まあ、そういうことだったらちょっと勉強していきましょうか?」(微笑)
スウ「そうだね、シキネもそれでいいでしょ?」(苦笑)
シキネ「もちろんさ。ちょっと男ひとりでドキドキするけどね……」
コッコ「……」(伏目)
スウ「……」(呆れ)
シキネ「ごめんちゃい」
という流れだった。こういうこともあるのだろう。そういえばチリコのことを忘れている気がするけど、招集をかけていないんだからそりゃ来ないよな……まあいいか。
シキネ「そういうわけでコッコさん、今日は俺に古典をはじめから丁寧に教えてほしいです」
スウ「あ、私もそれ混ざって教わりたーい」(デフォ)
コッコさんはやれやれといった顔をした。この人の動作の一つ一つは本当に同い年とは思えないような余裕と貫禄があるなあ。
コッコ「しょうがないわね、いいわよ。正直……面倒なのだけれどね」(微笑)
コッコ「図書室でいいんでしょう?」(デフォ)
――
廊下
――
コッコさんを先頭に図書室へ向かった。
あんまり表情の変化が無いスウもなんだか少しわくわくしているように見えた。
――ガラガラ
――
図書室
――
コッコ「あら、井部くん、ごきげん……」(デフォ)
井部「コッコさん! ちょうどいいところに、こっち来て下さい!」(慌て)
あれは確か、このあいだも図書室にいた井部くんとかいう下級生だったか?
……そしてあれ、コッコさんは素で挨拶が「ごきげんよう」なのか……? ますます謎が深まった。
コッコさんは井部くんに連れられて振り返りざまに
コッコ「私、去年の図書委員長だったのよ。ちょっとそれで……先にやっていて」(戸惑い)
と言って司書室の方へ行ってしまった。
とりあえず残された俺達は手頃な机に向かい合って座る。
シキネ「どうしよっか」
スウ「きっとすぐに……」(苦笑)
――Smells Like Teen Spirit(着メロ)
スウがケータイを取り出した。(ちなみに図書室ではマナーモードのはずだから着メロはきっと空耳)
スウは画面を見つめあっけらかんとする。俺にもメールを見せてくれた。
コッコ『ゴメンなさい、当分抜けられそうにないわ』
俺もあっけらかんとする。
どうする?
・じゃあ今日は解散ということで
・じゃあ今日は数学マンツーマン授業ということで
シキネ「じゃあ今日は数学マンツーマン授業ということで」
スウ「ええ……まあ、仕方ないないか、どこやる?」(苦笑)
シキネ「微分でよくわからないことがあるんです」
スウ「なになに?」(デフォ)
シキネ「なんで微分すると接線の傾きが出るの?」
スウ「え、そこ?」(デフォ)
シキネ「え、俺なんか馬鹿な質問したかな?」
スウ「いやね、もっと馬鹿な質問がくると思ったのに案外賢い質問がきたから」(苦笑)
シキネ「馬鹿って言うなよ……まあ馬鹿ですが……」
スウ「そういうことを気にすることは大事なことだよ。例えば導関数の計算をすることと微分をすることっていうのは違うし、計算することと数学をすることもちょっと違う。ここを意識しないと数学を楽しめないよ」(苦笑)
シキネ「計算と数学ねえ」
スウ「じゃあさ、ちょっと話を飛躍させてみるけど、微分って何だかわかる?」(微笑)
シキネ「え……だから導関数で接線の傾きを……」
スウ「ブブー!」(笑顔)
シキネ「ぶぅ?」
……なんだかよくわからないけど、彼女はすごく活き活きしていた。
……よくわからない。
スウ「それはただの計算、作業。つまりシキネは今まで微分が何だかわからないまま計算して問題を解いていたわけだ?」(にやにや)
シキネ「うん。かもね……」
スウ「じゃあ、身近にあるイメージしやすい例で微分とは何か考えてみようか?」(伏目[柔])
シキネ「うん」
スウ「じゃあね、質問」(微笑)
シキネ「なに?」
スウ「水平線は直線である。真か偽か?」(微笑)
シキネ「え、どういう意味?」
スウ「そのままの意味だよ、水平線は直線ですかってこと」(苦笑)
シキネ「水平線なんだから……線だよね? 真」
スウ「OK」(デフォ)
スウ「続けて質問。地球は丸い、真か偽か?」(微笑)
シキネ「え……丸いかって……え、丸くないの?」
スウ「丸いでしょ」(苦笑)
シキネ「え……どういうこと、何が言いたいの?」
スウ「何か気づかない……?」(微笑)
シキネ「今の二問が関係しているの?」
スウ「そう」(笑顔)
――どういうことなんだろう?
――わからない。
スウの方を見る。なんだかものすごく楽しそうにしている。さっき、しぶしぶ二人で勉強することになったときの表情が嘘みたいだった。「わからない」と言いたいところだったけど、なんだか悔しくなってきたのでもう少し考えることにした。
――考えろ。
――考えろ、俺。
シキネ「数学が分からない俺にもわかること?」
スウ「うん。二つの質問から気づくことを言ってほしいんだ」(微笑)
二つの質問。
――水平線は直線であるか?
――真。
――地球は丸いか?
――真。
何が言いたいのだろう。水平線は線なんだから線で当たり前だし……地球は宇宙から見たら……あれ……?
宇宙から見たら……?
シキネ「あれ、なんかおかしいよ。だって水平線ってつまり地球の表面でしょ? それが直線だったら地球は丸くならないはずだよ!?」
スウ「おお! 気づいたね!」(驚き)
スウ「そう、なんだかおかしいでしょ? でも水平線が直線だということと地球が丸いということ、この二つは一見矛盾しているけど、実は同時に成り立っていることなんだよ」(デフォ)
シキネ「……ってことは、水平線が本当は直線じゃなくて」
ここまで言ったところでスウが人差し指をふっていることに気づいた。
スウ「ノンノン、水平線は直線でいいんだよ。ただし人間サイズの観測者から見たときの話だけどね」(えっへん)
なんだろう。うぜえ。うざいけど続きが気になる。
急に饒舌になったスウは、「ここからが微分の話」と言って続けた。
スウ「地球は立体なんだけど、平面図形として考えたいから、円ってことにするね。ここまでOK?」(微笑)
シキネ「うん」
スウ「円ってことは曲線だよね。滑らかにくにゃくにゃっと曲がった線」(微笑)
「くにゃくにゃ」っていうのがちょっと可愛かった。
スウ「だけど、地球という円に対して塵みたいに小さな私たち人間がその曲線の一部、ここで言うところの水平線を見ると?」(微笑)
シキネ「直線に見えるんだ」
スウ「そういうこと」(笑顔)
スウ「それじゃあ微分についてまとめよう」(デフォ)
シキネ「うん」
スウ「曲線のある点から見ることができる、ものすごく狭い範囲、区間ではその曲線がどのように見えるのかなって調べるのが微分なんだよ」(えっへん)
スウは「ほらね?」という感じでやりきった感を全面出していたが俺はそこに水をさしてやる。
シキネ「ごめん、最後のまとめで意味わかんなくなった」
スウ「え……」(きょとん)
シキネ「そして微分のイメージはなんとなくつかめたけど、極限とかなぜ接線になるのかがわからない」
スウ「だからね、ある曲線をf(x)としたときにf(x)上のある点(a,f(a))に(x,f(x))を限りなく近づけていくと……」(困惑)
シキネ「うん、それは知っているよ? 二点を結ぶ線は、二点が重なったときにその点の接線になるんでしょ? でもさ、二点が重なったら直線が決まらないんじゃないの?」
スウ「二点は重なってないんだよ」(困惑)
シキネ「でも極限値は近づける数と同値と見なしていいんでしょ?」
スウ「うーん、まあ、そうなんだけどさ……極限という考え方がまだよくわかってないんだね」(うーん)
スウは「うーん」と唸りながらノートを取り出し、なにやら放物線っぽい曲線を書いて、それに沿って小さな丸を繋げていくといったメンヘラっぽいことをし始めた。しばらくすると、パタンとノートを閉じてこっちに向き直った。今日のスウはなんだかいつもと違うけど、いつもより動きが可愛い気がする。いいね。
スウ「わからない……」(困惑)
何がわからないのかはまた別の話。

ネタバレになるような気がしなくもないコメントを残します。
Qは「面白い」「つまらない」ではなくて「わからない」。
Qは僕たちを「ガキ」にする作品。
Qは何もかも分かっているつもりの「大人」を「ガキ」にする作品。
僕がガキだった頃はわからないこととたくさん出会いました。
その度に
憤りを感じたり
怖くなったり
空しくなったり
見て見ぬフリをしたり
笑って誤摩化したりしました。
今そんな感じです。
「つまらなかった」というのも「面白かった」というのも一種の合理化だと思います。
人は「わからないもの」があると不安になるので無理矢理にでも処理したくなるのかもしれません。
とにかく僕はQをありのままに評価しようとすると「わからない」が一番適当だと思いました。
あれ……そういう意味でのQなのか……?

寒い季節、寒い朝、だんだんと暖かいスープが恋しくなる時期になってきました。
私も今朝はコーンスープを頂きました。
おや……?
何でしょう、このオシャレな感じのマグカップは……?「私は女優になりたいの」マグカップだああああああああ!!というわけで今日も一日なんとかかんとか頑張りましょう。
――4月19日(日)
――
彩里宅リビングダイニング
――
シキネ「えー、この勉強会発足に際しまして、企画と言いますか、元凶と言いますのがまさにこの私、シキネであります。私、生まれは……」
何をしているかと言えば……まあ、察して下さいよ、自己紹介会ってやつですね。
シキネ「……そして私が十二の頃、中学校に入学しまして、初めて勉学というものと触れ合いました。私も中学の頃は勉学に励んでおりまして、成績も上位をキープし……」
エーコ「ね―、シキネくんって下の名前なんだったー?」(きゃは)
シキネ「え? 俺はね……」
園崎さんに自己紹介を遮られた。
「シキネくんがオープニングを飾りなよ」とみんなが言うから原稿までおこして挨拶を考えたのに……。だけど、まあ、最初のほうはウケていたチリコとかも小学校の運動会の話あたりから、愛想笑い的な表情をチラつかせはじめ、そろそろ自分でも限界を感じ始めていたところだった。
それにしても、俺の下の名前、今まで誰も触れてはくれなかった……。
俺の下の名前はね……。
下の名前はね……!
エーコ「あ、ごまたまご私にも頂戴!!」(きゃは)
シキネ「……」
スウ「ん、シキネもう終わり? よし、じゃあ次は私だよね」(デフォ)
シキネ「あ、うん……」
下の名前の話題は流れた。園崎さんとスウの華麗な連携プレーで流された。いいんだ。いいんだ。俺の下の名前なんてみんなどうでもいいんだ。仕方ないことなんだ。
俺もごまたまご食べたいな……。
ここは彩里さんのお家、俺が来たのは二回目だ。みんなでお菓子を持ち寄ったりしてお茶をしながら自己紹介会というわけだ。もちろん、この必要なのか微妙な感じのパーティー飾りは彩里さんのスーパー折り紙テクによるものだ。
そしてスウのターン。
スウ「えーと、いいかな?」(デフォ)
さわぐ園崎さん。
はしゃぐ彩里さん。
バタバタするチリコ。
わっしょい白石。
ほとばしる筋肉。
……そこに静寂という言葉は見当たらなかった。
誰も聞いちゃいねえ、なんてこったい……。
スウ「おーい、始めるよー?」(苦笑)
シオ「うふふっ……え、スウちゃんは別に自己紹介しなくてもいいんじゃないかな? だってみんなスウちゃんのこと知っているでしょ?」(笑顔[閉眼])
エーコ「たしかにー。それよりもチリコの自己紹介が聞きたいなー、ほら、チリコー」(にやにや)
チリコ「あわわわわっ、ちょっ、エーコさんっ、くすぐるのは駄目ですーーっ」(笑顔紅潮)
エーコ「だってチリコの反応が面白いんだもーん」(笑顔)
園崎さんとチリコがじゃれ合っている……おお、美しい。
そしてスウはと言うと、しばらくみんなに自己紹介を聞いてもらおうとしていたが、誰も聞く耳を持たない状態にしびれをきらし、
スウ「スウです、数学が好きです!」(不満)
とぶっきらぼうに言って、ぶすっと座って済ました。
そんなスウをよそに彩里さんと園崎さんはいまだにチリコで遊んでいる。
白石としゅんじはいつの間にかあや取りを始めていた。
コッコさんがいれば少しは歯止め役になったかもしれない。あいにくコッコさんは「土日は都合が悪いの」と今日は来ていない。彼女の自己紹介は聞きたかったのだが……。
ちなみにチカちゃんはここにちゃんといるのだが、微動だにしてない。
スウ「なんでみんな聞いてくれないんだよ……」(涙)
シキネ「俺は聞いていたんだけどなあ」
スウ「じゃあ、せっかくだからシキネだけでも聞いてよ。デモンストレーションにバーゼル問題の証明をここでしようかと思っていたんだ」(苦笑)
シキネ「何それ?」
スウ「まず代数学の基本定理ってわかるよね?」(教える顔)
シキネ「何それ?」
スウ「因数定理とかああいうやつの、まあ、そこは割とどうでもいいから、sinxを冪級数の和の形に展開するんだ、これをテイラー展開って言ってね……」(きらきら)
スウさん、すごいね。俺が全く理解できないままに証明は続いていった。
スウ「ほら、気づいたらこんなところに収束した値が出るんだよ! これは人類史上最も偉大な数学者レオンハルト・オイラーさんの証明でね、とっても美しいでしょう?」(きらきら)
シキネ「あ……うん……すごいね……」
スウ「……もっと驚きなよ」(きょとん)
スウが数学の話をするときはとても饒舌で、ハイテンションモードになっている。こんな子のことをきっと数学ガールというのだろう。だが俺には理解できない。
シキネ「ごめん……数学をもっと勉強してから、またいつか話してくれないかな?」
スウのテンションは塩のかかったナメクジのごとくしぼんでいった。
スウ「どーせ、こんな数学、社会に出たら使わないんだよね。私、知っているから、アハハハハハハハハハハハ」(自虐)
スウが拗ねた。
そしてチリコの番が来た。
エーコ「チリコー、がんばー」(笑顔)
シオ「ちゃんと言ったとおりにやってね」(笑顔[開眼])
チリコ「えっ、ホントにやるんですかーーーっ?」(もじもじ紅潮)
エーコ「やって、やって」(にやにや)
シオ「うんうん」(笑顔[閉眼])
チリコ「うう……冴木チリコです……べ、べつに仲良くしてほしくなんか……ないんだからね……」(もじもじ紅潮)
シキネ「……」
白石「……」(真顔)
しゅんじ「……」(真顔)
エーコ「あはははははははっ」(笑顔)
シオ「おかしー」(笑顔[閉眼])
……笑っていたのは彩里さんと園崎さんだけだった。園崎さんたちがいる空間をオーストラリア西海岸だとしたら、このあたりは新潟県の妙高高原だった。白石としゅんじもさすがに冷めていた。
そもそもチョイスがおかしい。チリコに取って付けたようなツンデレキャラなど不可能だ、果てしなく中途半端な自己紹介だった。
この温度差、どうしてくれよう……。
エーコ「あ、次は私か。園崎エーコです、ダブっているけど仲良くしてね!」(きゃは)
だからその、毎回必ず入れる、タブっている~のくだりは必要なんだろうか。俺には女心はわからないが。
白石「白石スケッチです」(真顔)
しゅんじ「アイアムマッスル、ギブミーアエッグ」(真顔)
スウ「……」(まんざらでもない)
男たちの自己紹介も終わった。ちなみにスウはいつの間にか立ち直っていた。
そしてチカちゃんの番が回ってきた。チカちゃんが今日初めて口を開くぞ!
チカ「彩里チカです……」(デフォ)
シキネ「……」
白石「……」(真顔)
しゅんじ「……」(真顔)
チカ「……」(デフォ)
――ストン
……座った! 名前だけかよ! もっと自分のことを喋ろうよ!
そして楽しい時間は過ぎるのが早いらしく……いや、正直楽しんでいるのは西海岸だけだけども……コッコさんがいないため、次の彩里さんで自己紹介もラストということになった。
エーコ「組長! 組長!」(笑顔)
しゅんじ「組長! 組長!」(真顔)
どこからともなく組長コール、かく言う俺も混ざっているのだが……。
シオ「ちょっと、みんな、そんな呼び方やめてよ」(苦笑)
エーコ「みんな、組長の挨拶だから静かに!」(真面目)
園崎さんが呼びかける。そのときスウが唇をとんがらせていたのは秘密の話。
彩里さんの自己紹介が始まる。
シオ「彩里シオです、もとはといえば私がシキネくんに変なこと吹き込んだことが始まり……なのかな?」(苦笑)
シキネ「変なことて……」
シオ「ああっ、悪い意味じゃなくてね。不本意ながらも組長……?になりましたのでこれから頑張りましょっか」(笑顔[開眼])
シキネ「ウ゛オ゛オオオオオオオォォォォ」
白石「ウ゛オ゛オオオオオオオォォォォ」(デス)
しゅんじ「ウ゛オ゛オオオオオオオォォォォ」(デス)
会場は熱気に包まれ七つのメロイックサインが神の降臨を祝福した。
エーコ「はいはーい、しつもーん!」(笑顔)
シオ「はい、エーコちゃん」(デフォ)
エーコ「シオのご両親が学者さんっていうのは本当? 何の学者さん?」(デフォ)
スウ「あ、私も話聞きたいな、今日は家にいらっしゃらないの?」(デフォ)
この話題にはスウも食いついてきた。
だがここで、俺はある異変に気づくことになる。
シオ「え……ああ……」(動揺)
彩里さんの目は泳いでいた。
シオ「あの……ね」(伏目)
明らかに動揺している……どうしたんだろう?
チカ「……両親は主に工学者として研究施設に勤めています。今は海外へ出張しているので日本にはいません」(デフォ)
口を開いたのはチカちゃんだった。さっきまで口ひとつきかなかったチカちゃんがいきなり喋りだしたのでみんな一瞬驚いていたがすぐに調子を取り戻したようだった。
エーコ「そうなんだ、すごいね」(きゃは)
チリコ「すごいです」(デフォ)
会話の勢いは戻り、話題もすぐに別のものに変わり、もうこの話に戻るようなことはなかった。……というよりはみんなして危険な場所には近付かないようにしていたように思えた、わざとらしく。
それからはただのお茶会で、ぱっとしない空気のまま勉強の話もしないでお開きとなった。
――
町
――
帰り道、スウと二人きりになった。
シキネ「今日は楽しかったね」
スウ「私はあんまり……」(不満)
シキネ「そんなこと言うなよ」
スウ「まあ、楽しかったよね」(苦笑)
自転車を押すスウの顔が少し俯く。
スウ「ねえ、シキネ……」(デフォ)
シキネ「ん?」
スウ「シオのことだけどさ」(デフォ)
シキネ「……」
――沈黙
自転車の車輪のカラカラという音がやたらと聞こえてくる。
スウ「ごめん、やっぱなんでもない」(苦笑)
シキネ「うん」
聞きたい気もしたが、聞きたくない気もした。
そこに真実があるのなら、もう少しピエロでいたかった。
このメランコリーな気持ちはどこから来るのだろうか、いつまで続くのだろうか。
それはまた別の話。

みなさんお気づきだったかもしれませんが、前回のあかほん!第9話には挿絵がありませんでした。
その辺は内部事情なのでまあいいのですが、前回の分を記事に追加しておきました。
ところで、今回はじめて白石としゅんじが描かれていますがこの二人にはモデルがいます。
高校時代からの親友です。
白石はイケメンでしゅんじは筋肉です。
この世界に彩りを加える二人をよろしくお願いします。
水彩が得意な友達に一枚描いてもらいました。
すごく鮮やか!
眼から絵の具が垂れてくる勢いです!!
というわけでキービジュアルが完成するまでこの鮮やかな絵をTOPに置いておきましょう。

ちなみにこちらが壁紙になっているので、デスクトップの壁紙にするなり、印刷して部屋の壁紙にするなりしてください。
さてさて、冬コミに向けて追い込みという感じの時期であります。
そのうちニコニコに本編をアップするつもりなのでよろしくお願いします。
ちなみにこちらがコミケのWEBカタログとかいうやつです。
https://webcatalog.circle.ms/Circle/83/W0058753元旦につくお餅が無いという方は是非お立ち寄り下さい。
――4月16日(木)
――
地歴公民準備室
――
シキネ「ちなみに下着のサイズは?」
チリコ「え、AA……って!!!!?? 何聞いているんですか!!!????」(もー紅潮)
シキネ「AAか……なるほど……」
チリコ「!“#$%&‘???!!?!!???!!!」(すごく紅潮)
シキネ「……で、どうなの、チリコちゃん?」
チリコ「……」(もじもじ紅潮)
どう考えても俺のせいなのだが、チリコはスイート・チリソースもびっくりなくらいに顔を真っ赤に染めて、絞り出すようにしてこう言った。
チリコ「私、すごい人見知りですし……勉強会なんて……」(もじもじ紅潮)
シキネ「絶対に駄目?」
チリコ「……はい」(残念)
シキネ「でも、そうは言ってもほら、俺とはこんなに話せているじゃん?」
チリコ「それは……先輩は気さくに話しかけてくれますから……」(もじもじ紅潮)
シキネ「そう? そっか……」
チリコは自信過小なんだ、性格なんだから仕方ないんだろうけど。話す前から話せないと決めつけている。俺は別に気さくな人間なんかじゃない。チリコに遠慮なく接することができるのはチリコの顔にいじめて下さいと……書いてあるわけではないが、とにかくチリコが話しやすい雰囲気を作っているからだ。チリコはきっとそういう素質を持っている、ただ、誰も、本人さえもそれに気付いていないだけだ。
せめて、俺みたいに一度会話にまで持っていくことができればいいのだが……。
シキネ「チリコってさ、いつもここでお昼食べているの?」
チリコ「ええ、お昼を持ってきてここで」(デフォ)
シキネ「じゃあ、明日も来るね」
チリコ「はい」(もじもじ)
シキネ「じゃあ、今日はもう帰るね」
チリコ「はい、お気を付けて」(デフォ)
シキネ「気をつけてって、なんだそりゃ」
チリコ「……」(もじもじ紅潮)
シキネ「じゃあね」
チリコ「じゃあ……お気を付けて……」(もじもじ紅潮)
――
会議スペース
――
コッコ「あら、戻ってきたわよ」(デフォ)
シオ「シキネくーん、どうだった?」(笑顔[開眼])
シキネ「AAだったよ」
俺は今日の会話の一部始終を大まかに説明した。
スウ「死ねっ」(怒り)
シキネ「でびるっ」
スウに蹴られた。
シオ「せっかく驚かせちゃ悪いからってシキネくん一人に任せたのにね……」(苦笑)
コッコ「噂にはいろいろ聞いていたけれど、正直見くびっていたわ、ごめんなさい」(引き)
シキネ「いやいや、驚かせちゃ悪いから小出しにしていくつもりだったんだよ」
スウ「死ねっ」(怒り)
シキネ「まろんっ」
シオ「その……チリコちゃんは来てくれそうなのかな……?」(呆れ)
シキネ「うん……そのことなんだけどね、驚かせちゃうくらいがいいのかもしれない」
俺はさっき思いついた作戦を説明した。
シオ「なるほどねー」(真面目)
スウ「それ、逆効果だったら悲惨だよ?」(デフォ)
シキネ「俺の見立てだといけるんだけどなあ」
コッコ「まあ、これで駄目ならそもそも勉強会に参加することも難しいんじゃない?」(デフォ)
シオ「そうだね……エーコちゃん、聞いていた?」(真面目)
エーコ「え?」(きょとん)
ふと見ると、園崎さんとチカちゃんと白石としゅんじでインディアンポーカーをやっているようだった。
エーコ「……なるほど、わかったよ!」(きゃは)
シキネ「ところで彩里さん、今日の放課後の勉強会は……?」
エーコ「今日はやらないよ!!」(きゃは)
なぜか応えたのは園崎さんだった。
エーコ「今日はみんなで遊びに行くから!!」(きゃは)
シキネ「今日もかよ!」
エーコ「シキネくんも来る? あ、やっぱいいや、シキネくんは勉強しなさい!」(きゃは→デフォ)
シキネ「確かに! 確かに俺は勉強すべきだ!」
エーコ「というわけで、白石くん、今度はスピードやろー」(きゃは)
白石「ふ、俺のスピードについて来られるかな」(真顔)
エーコ「やだ、白石くん、一周して普通のこと言っちゃってる」(笑顔)
園崎さんと白石はいつの間にやらスピードをやる仲になっていて、一方チカちゃんは園崎さんからやっと解放されたと言わんばかりにUNOを持って物欲しげにしているしゅんじをガン無視していた。
なんだろうこれは……ただの仲良しグループじゃないか。
スウ「ところで……身長は?」(デフォ)
シキネ「ん、いきなり何?」
スウが小声で話しかけてきた。
スウ「その子の身長だよ、聞いてきたんでしょ?」(デフォ)
シキネ「いや、聞いてないよ」
スウ「え、なんでブラのサイズを知っているのに身長を知らないの?」(呆れ)
シキネ「すんません」
スウ「もう、ちゃんとしてよ」(呆れ)
……何をちゃんとするのかはわからなかったが、きっとスウはチリコがどれくらい小柄なのか気になっているのだろう。なんだろう……少し切なくなった。
そしてその切なさよりも遠くの方で、昨日から不安がじわじわ広がっている。もしかして、もしかすると……人選ミスだったのかな?
エーコ「いけー、ロイヤルストーレートフラッシュもどきー!」(笑顔)
あんただよ! 園崎エーコさん!
俺はこの怠惰とも思われる日常に受験という不安材料を捨てきれないまま、愉快な時間を楽しみきれないまま、複雑な心境でいるしかなかった。
――高校三年生の春。
――4月17日(金)
――
地歴公民準備室
――
[昼休み]
シキネ「こんにちは」
チリコ「こんにち……え!?」(驚き)
チリコが固まった。まあ、仕方ないだろう。
エーコ「こんにちはー!」(笑顔)
シオ「こんにちは」(笑顔[開眼])
スウ「本当に来てよかったのかな?」(考え顔)
コッコ「あら、意外と広いのね」(デフォ)
チカ「……」(デフォ)
白石「ウイッス」(真顔)
しゅんじ「プロテイン未使用」(真顔)
みんなを連れてきてやった。
改めて勉強会のメンバーをまとめてみるとこうなる。
園崎エーコさん(英語)
彩里シオさん(物理)
スウ(数学)
コッコさん(国語)
彩里チカちゃん(化学)
白石(ほも)
筋肉(筋肉)
チリコ「あああ、あのあのっ、この方達はっ!?」(慌て)
シキネ「こちらが例の勉強会のみなさんです」
そして俺は振り返る。
シキネ「そしてみなさん、こちらが社会科マスター、チリコさんです」
チリコは明らかにテンパっていた。
チリコ「ちょっ、先輩!? なんですか社会科マスターって」(慌て)
そして俺の思惑どおり、そんなチリコを彼女たちが放っておくはずがなかった。
エーコ「カワイイー!」(きゃは)
チリコに抱きつく園崎さん。
シオ「チリコちゃん、よろしくね」(笑顔[閉眼])
素敵な笑顔の彩里さん。
とりあえずこの二人がチリコで遊び始める。
チリコ「はわわわわっ」(慌て)
コッコ「あら、仔猫ちゃんかしら?」(なまめかしい)
コッコさんが加わった。チリコのふたつしばりを掴んでいる。
チリコ「はわわっ、あのう」(慌て)
ああ……心配なく仲良くなれそうだな。うん……イジメ……ではないよな、大丈夫だよな、大丈夫だ、うん、大丈夫。
するとスウがこっちに来た。
スウ「なんか、あの様子だと大丈夫っぽいね」(苦笑)
シキネ「俺も今そう思っていたんだよ」
スウにそう言われて初めて安心できたというのは秘密の話。
スウ「身長……」(デフォ)
シキネ「?」
スウ「どのくらいかな……?」(デフォ)
がんばれスウ、見た感じなかなかいい勝負だと思うぜ!
……そしてしっちゃかめっちゃかした末、チリコが勉強会に正式に加わった。俺の思っていたとおり、チリコは自分に自信をもてないタイプだったようだ。だけど、確かなものを持っているんだ、俺達でつついてやればきっとチリコも自信を持つことができるんじゃないかと思った。もっといろいろな人と付き合っていろいろな自分に気付いていければ……こんな狭い部屋に閉じこもることもなくなるんじゃないかって思うんだ。
そして……。
白石「あーるーぷーすー一万弱」(真顔)
しゅんじ「大胸筋のうーえーで」(真顔)
白石「アルペンおーどーりーをー」(真顔)
しゅんじ「レッツ・ダンス」(真顔)
白石としゅんじがひっそりとアルプス一万尺をやっていたのは秘密の話。
月曜日 東地区“V”ブロック-22b
だそうです。
とりあえず今日はそれだけ!