
明日、というか今日我々のゲーム「私は女優になりたいの」の最後の声収録をしてきます。
思えば長い長い……ようで思ったよりも全然スムーズに進んだのでそんなに長い期間ではありませんでしたが、とても濃密な時間でした。
アカネちゃんとかセクシーですし、白石とかもセクシーですし、斉藤も主役先輩も斉藤母も神保くんも伊吹くんもみんなだいたいセクシーです。セクシーなんです。
さてさて、それでは明日(今日)に備えてこの辺で……。
巷で噂のセクシー↑↑(うえうえ)
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――4月10日(金)
――
教室
――
スウ「で……君はどれくらい数学が出来るの?」(疑問)
シキネ「出来ません」
スウ「じゃあ……数学は好き?」(デフォ)
シキネ「なんとなく好きです……が、出来ません」
スウ「OK……じゃあ、どこまで出来るの?」(笑顔[同情])
シキネ「出来ま……ええと、出来るのは、足し算と、引き算と、掛け算と、割り算です」
スウ「なるほどねー、了解」(デフォ)
シキネ「掛け算が一番得意です」
スウ「ほう……」(デフォ)
シキネ「あ、あと消費税!」
シオ「シキネくん今はもう税込表示だよ」(笑顔[閉眼])
スウ「フッ、了解……」(苦笑)
その日、スウは休み時間に俺と彩里さんの席のところまでやってきて、まるで塾講師さながらの面談を始めていた。
しかし意外だ、もっとバカにされたり残念な顔をされたりすると思っていたのに。
シオ「どうですか……先生?」(真面目)
そして彩里さん、あなたは一体どういう立場なんですか。俺の何なんですか。
スウ「んーまあ、そうだね」(苦笑)
シオ「これが……偏差値18の正体」(真面目)
いや、だからさ、彩里さん……。
スウ「とりあえず、出来ないことがわかっているだけマシかな」(苦笑)
シキネ「え、そうなの」
スウ「うん、これからどんどん伸びるよ」(笑顔)
シキネ「そっか……よかった……」
スウ「まあ……君がちゃんとやればの話だけれどね」(苦笑)
面談のあとはこれからの計画などを一緒に立てた。正直、俺の方はというと元々自分で勉強が出来ないくらい無計画に生きているのだから、話し合いの主体となっていたのはスウと彩里さんだった。俺が気になるのはやはり彩里さんのことである。スウは彩里さんの頼みだからということで俺に力添えしてくれているみたいだし、チカちゃんにしたって彩里さんのはからいだった。
そもそも、この「俺に勉強を教えよう企画」の発端となったのは彩里さんである。そしてなぜが当の俺よりも張り切っている気がした……。普通に考えて、いくら偏差値18という歴史的な不出来者が勉強を教えてくれとのたまっているからといっても、ここまでしてくれるのは人が良すぎるのではないか。
やはり……何か企んでいるのだろうか……。
その笑顔の下にはどす黒い渦巻きが見え隠れしていた。
ん、そうか、そういえば企みはあったんだっけ。
――4月9日(木)
――
彩里宅リビングダイニング
――
昨日のチカちゃんのことである。
チカちゃんに「やだ」と言われたあと、彩里さんは必死に説得してくれて、俺は必死に土下座をし続けた。しかしまあ、それも虚しく、「やだ」が続いたので彩里さんもついに諦めたらしく、
シオ「うーん、そこまで嫌なら仕方ないか…… じゃあ、わかった。ちょっと大変かもしれないけど、化学も私が見ることにしよっか」(残念)
といった流れになったのだが、その途端に、
チカ「……そういうことになるなら……私がやる」(しぶしぶ)
とチカちゃんはあっさりと承諾してくれたのだった。
押してだめなら引いてみろってことなのか? ということは、もしかしてさっきの引きは演技だったのか。策士なのか。
シオ「あらあら、いいの、チカ?」(笑顔[閉眼])
あ、これは策士だ。
チカ「たまに……本当にたまになら……」(困惑)
シオ「そう……。だって、シキネくん」(笑顔[閉眼])
シキネ「ありがとう、チカちゃん」
チカ「……」(デフォ)
結局、チカちゃんは俺に口を聞いてくれることの無いまま部屋に戻っていった。
シキネ「いやあ、なんかすいません、姉妹そろって面倒を見てもらうことになって」
シオ「ううん、感謝したいのはむしろこっち。実はね……」(笑顔[開眼])
実はこういうことだった。
彩里さんは元々俺の化学のことなどは眼中に無く、人見知りの激しいチカちゃんの交友の幅を広げようとしていたのだ。こういう企画モノだったら、チカちゃんも人との交流をせざるをえないだろうと考えたらしい。
シキネ「ああ、じゃあ俺はハメられたってことですかね?」
シオ「ごめんね。でもほら、物理教えてあげるじゃん、ね?」(笑顔[閉眼])
あまりにも親身に俺の力になってくれるものだから、もしかしたら彩里さんは俺に気があるんじゃないかと淡い期待も抱いていたが、宙に弾けてしまった。
シオ「チカはさ、特に男の人に対して全然免疫がないから、かわいがってあげてね」(笑顔[閉眼])
シキネ「かわいがるって……」
シオ「えへへっ」(笑顔[閉眼])
――4月10日(金)
――
教室
――
そういうわけで企みはあったのだ、今度はものすごく妹さん想いということになるが。
とにかく、これで「数学」「物理」「化学」の勉強は見てもらえることになった。とても強力な3教科だし、もうこれでいいんじゃね、という気がするが、スウも彩里さんも「残りの科目どうしようか」と、やっぱり俺よりも真面目に悩んでいた。
そして、もうひとつ彼女らが真剣に話し合っていることがあった。
シオ「やっぱり図書室じゃないかな……」(真面目)
スウ「そうだね、勉強スペースもあるし」(デフォ)
シオ「他に候補は?」(真面目)
スウ「んー、地歴公民教室みたいな特別教室だったらどこか空いているかも」(デフォ)
そう、どこで勉強するかということだった。
シオ「いいね。ほら、図書室にあんまり大人数で行くのもよくないし……」(真面目)
最終的にどんな規模にするつもりなんでしょうか……。
スウ「今日の放課後行ってみようか?」(提案)
シオ「ごめん、私今日委員会があるんだよ」(残念)
スウ「わあ、さすがシオだ」(驚き)
シオ「そうなの、三年になってからもまた引き受けることに……なっちゃって」(てへぺろ)
スウ「人望があるってことでしょ。だけどほら、二年のときはもう一人がさ……」(笑顔)
シオ「ああ、石田くん?」(デフォ)
スウ「そうそう、すっごいカッコつけたがりだってみんな言っていたじゃん」(苦笑)
シオ「うーん、でもいい人だったよ。仕事もちゃんとこなすし……まあ確かに、カッコつけだったかな……?」(笑顔[閉眼])→(呆れ)
スウ「でしょー?」(苦笑)
シオ「誰も見てないのにねー」(呆れ)
スウ「あはは」(苦笑)
……ここはあれか、女子会か。なんで男の俺が混ざっているんだ、ああそうか、元勉強会だったのか。最初から少し蚊帳の外っぽい感じはしていた。ぷるるん女子トークが始まったあたりから俺は「確かに自分の席に座っているはずなのに、自分の居場所がわからなくなる」という非常に哲学的な命題と向き合うハメになっていた。
――
廊下
――
シキネ「なあ、白石」
白石「あ?」(真顔)
シキネ「なあ、筋肉」
しゅんじ「あ?」(真顔)
シキネ「男子会やろーぜ」
白石「あ?」(真顔)
しゅんじ「あ?」(真顔)
シキネ「やろーぜ、やろーぜ」
白石「やらねーよ」(真顔)
シキネ「やろ……」
白石「やらねーよ」(真顔)
シキネ「……」
白石「やらねーよ」(真顔)
男子会でわっしょいするのはまた別の話。
「理系への数学的航空戦線-The Imaginary World-」は数学をテーマにしたシューティングゲームですので数学的な小ネタがいろいろと入っています。
今作はThe Imaginary Worldというサブタイトルから察してもらえるかもれませんが、複素数らへんに着目して数学者を選びました。
複素平面っつたらガウスさんですよね。そんでなんかとりあえずヒルベルトさんが好きだったのでこう、出しました。ちなみにガウスさんとヒルベルトさんはリーマン予想という問題にいろいろ関わっています。
ヒルベルトさんはもうリーマン予想の証明が気になり過ぎて「私が500年の眠りについたとすると、眠りから目覚めたときの第一声は"誰がリーマン予想を証明したか"になるだろう」みたいなことを言っていたらしいです。ヒルベルトさんは19世紀の終わりに「ヒルベルトの23の問題」という数学にとって重要でかつその当時未解決な問題を提示しました。そのうちの第8の問題がリーマン予想でした。
リーマン予想と言えば素数の重要な性質を解き明かす数学の予想です。
リーマン予想の起源を辿ってみると、ガウスさんが出てくるんです、たぶん。ガウスさんは素数定理という素数に関する重要な定理を提唱しました。なんか忘れたんですけどその流れを汲んだり汲まなかったりでリーマンさんがリーマン予想を提唱したのでした。たしかリーマンさん(生徒)はガウスさん(先生)に大学とかで出会っていたと思います。
そしてそして、素数といったらユークリッドさんですね。ユークリッドさんといったらユークリッド幾何学かもしれませんが、素数が無限に存在することを証明したのはユークリッドさんです。古代ギリシャの数学はすごいのです。
まあ、そんな感じでこの3人をチョイスしました。
・1面の中ボスについて
なんだこのオ○リンみたいなやつはと思った方もいると思います。
これは、いつ頃だったかは忘れましたが、エンリコ・ボンビエリさんという数学者がエイプリルフールに「リーマン予想を若い物理学者が解いた」という嘘のメールを数学者仲間に送って大混乱した、というお話からきています。つまり、こいつが空想上の若い物理学者です。
・ヒルベルトについて
第一形態のヒルベルトさんの動きは「ヒルベルトステップ」と勝手に命名しましたが、ヒルベルト曲線というフラクタル図形を参考にしています。
・ピタゴラスについて
古代ギリシャということでご登場願いました。「ひみつー」というのはピタゴラス教団が徹底的な秘密主義だったとかなんとかいう史実からです。
・ユークリッドについて
ユークリッドさんのとても重要な著書「原論」に書かれている第五公準が、かの有名な平行線がうんたらかんたらというやつですね。
・ガウスについて
ガウスさんは若い頃に正17角形の作図方法を見つけたんです、すごいです。あと、最後の技である「ガウスフィールド」ですが、これは複素平面におけるガウス素数がある場所に弾が現れるという技になっています。もし初見の方だったとしてもガウス素数の位置を覚えていればきっと避けられたと思います!!!!(無理)
そんなこんなで、他にもなんかあったかもしれませんが、これが仕込んだ小ネタ達になります。(ああ疲れた)
さあ、勉強しよう。
「私は女優になりたいのC82版」と「理系への数学的航空戦線-The Imaginary World-」を以下のサイトさまで公開しました。暇だったらDLしてやってみて下さい!
私は女優になりたいのC82版
理系への数学的航空戦線-The Imaginary World-
ちなみに、「理系への数学的航空戦線-The Imaginary World-」に仕込んだ数学的な小ネタたちは明日くらいに解説しようかなと考えています。では。
みなさんメニューバーの「ギャラガー」の存在にはお気づきだったでしょうか?
今までは工事中でしたが……今日から始動します……!
さあ、押してみて下さい。
これがギャラガーです。
※私は全然oasisを知りません。
すいません。
――4月9日(木)
――
教室
――
この日、彩里さんから正式にスウのことを紹介された。
シキネ「昨日はすんません」
スウ「別に、慣れているし、私も蹴ったことは謝るね。ごめんなさい」(デフォ)
シキネ「本当にすんません」
スウ「話はシオからいろいろ聞いたけどさ、本当におかしいよね」(呆れ)
シキネ「すんません」
スウ「正直……あんまり気のりはしないのだけれど、シオの友達っていうなら信用できなくもないから……」(残念)
彩里さんの方を向く。
シキネ「……俺たちって友達なの?」
シオ「……」(笑顔[閉眼])
おぁ……あの殺傷能力のある笑顔だ……。
スウ「え、友達じゃなかったの……?」(驚き)
シキネ「いや、あのっ、友達だよ! ……だよね?」
シオ「うん……友達だよ」(笑顔[閉眼])
嘘だっ!
その笑顔は絶対に違う、何を……企んでいるんだ、彩里さん!?
疑念は尽きなかったが、仏様を後ろ盾にしているようなその笑顔の前では俺は風前の灯だった。
スウ「とりあえず、まだ新学期が始まったばっかりでお互いに忙しいと思うから、今週は……って言ってももう明日しかないけど、計画だけ立てることにして、実施は来週からにしようか?」(デフォ)
シキネ「そうだね……ありがたいです」
スウ「じゃあ、とりあえず……」(まんざらでもない)
メールアドレスを交換した。
ああ……なんだかすごいことになっている気がするぞ。
シオ「……」(笑顔[閉眼])
……そして彩里さんは俺のこの状況をすごく楽しんでいる気がするぞ。
[ホームルーム]
シオ「ね、いい子でしょ?」(笑顔[開眼])
シキネ「確かに、優しい人だと思った」
シオ「仲良くしてあげてね」(笑顔[閉眼])
シキネ「了解です」
シオ「……」(笑顔[閉眼])
うーん、絶対、ぜーったい何か、企んでいるぞ……この人……。
[昼休み]
――
廊下
――
シキネ「そんなわけで、昨日の一件から話がかなりややこしくなってしまいました」
白石「お前、まじうんこだな」(真顔)
シキネ「……いいんだ、もう何と言われようと俺は決めたんだ」
何を決めたんだっけ……ほとんど彩里さんに流されているだけのような気がしてきた……。
しゅんじ「それは筋肉か?」(真顔)
シキネ「それは筋肉じゃないぞ」
白石は相変わらずツンデレだし、しゅんじは相変わらず筋肉にしか興味が無いし、こいつらに相談しても何の実りは無いようだ。
白石「あれ、やらかした、ここ二階だ」(真顔)
シキネ「ああ、そっか、つい去年までの癖で……」
確かに、よく見ると全然知らない顔たちが廊下を歩いていることに気付く。
シキネ「あ……」
??「……」(デフォ)
そして、その中から俺は昨日のツインテ美少女を見つけて、そういえばうちの高校の制服を着ていたっけ、としみじみ思った。
??「……」(デフォ)
そして、昨日はいい声で鳴いていたなあと、しみじみ思った。っと、そろそろ俺のパンツのしみじみがマズイな。
しゅんじ「どうせなら二年ビビらせながら帰ろうぜ」
シキネ「それは、絶対にやめようぜ」
俺と白石はしゅんじに片足ずつ膝カックンを仕掛けた。しゅんじはこけた。
もう一度ツインテ美少女がいた方を見たが、もういなかった。
――
教室
――
[ホームルーム]
シオ「そういえばさ、今日の放課後、うちにおいでよ」(デフォ)
シキネ「家にぃぃぃぃ!? 放課後ぉぉぉぉ!!!?」
シオ「驚きすぎ、ヘンなこと考えてない?」(笑顔[閉眼])
シキネ「ヘンなぁぁぁぁぁぁ!?」
シオ「だからね、ちょっと落ち着いてね。妹に会わせたいの、私の妹、チカっていうんだけど、すっごく勉強できるんだよ」(笑顔[開眼])
シキネ「へえ……」
シオ「私も時々教えてもらうことがあるくらい……」(てへぺろ)
シキネ「は、彩里さんが……?」
シオ「ね、力強いでしょ?」(笑顔[開眼])
シキネ「すごいね……。わかったよ、でも俺、放課後に面談があるからちょっと遅くなるかもしれない」
シオ「そっか、じゃあ地図描くね……はい、これ」(笑顔[閉眼])
シキネ「早いなあ、しかも上手だ。……あれ、これ俺んちの近くじゃん。なんで?」
シオ「うそ、結構最近引っ越したんだよ、去年の12月頃のこと。シキネくんもこの辺に住んでいるんだ?」(驚き)
シキネ「えー、今まで全然気が付かなかった。それじゃあ、面談が終わったら寄っていくよ」
――
彩里宅
――
[放課後]
担任には偏差値18についてくどくど説教された。まあ確かに、偏差値18だなんて高校史上初だったんだろうな……。
シキネ「ここかあ……でっかいなあ……」
そういえば聞いたことがあった、最近越してきた人がすごい学者さんだとかなんとか。彩里さんはその娘さんなのか、どうりで姉妹そろって頭がいいわけだよ。
とりあえずインターホンを押す。
??「はい」
――ガチャ
??「あ」(驚き)
昨日のツインテ美少女だ!! なんで!? まずい、まずい、まずい。
シキネ「あ……あのシオさん呼んでもら、もらえませうか?」
カミカミだった……。しかもツインテの子は俺が言い終える前に奥の方へ戻ってしまった。
??「ねえお姉ちゃん! なんで昨日のヘタレ男がうちに来ているの!?」
うん、妹さん、全部聞こえているぞ。
チカ「ねえ、お姉ちゃん! 起きてよ、昨日話したヘタレが……」
シオ「んん……ヘタレなんて言っちゃダメでしょー。ヘタレはともかく、シキネくんは弱い人間なんだから、優しくしてあげないと。自傷や非行に走られても夢見悪いでしょう? とにかく、今は友達を増やして生きる勇気をもってもらうのー。だから……うーん……」
彩里さん、この家にカッターか包丁はありませんか。願わくば練炭を……無いようならバケツに水でさえなんとかなると思うんです。今の俺ならやってやれると思うんです。
妹さんが戻ってきた。
チカ「姉は寝ていますので早めにお帰りになって下さい」(デフォ)
まあ、当然の対応だろう……。
どうする?
・なんとかして彩里さんに会う
・早めに帰る
[なんとかして彩里さんに会う]
シキネ「ごめんね。でも俺、彩里さんに呼ばれたわけだから、たぶん会わせてもらえれば大丈夫だと思うんだ」
チカ「ええ……」(不満)
明らかに嫌な顔をされた。
シキネ「……だから、部屋まで案内してもらえるかな?」
チカ「……わかりました」(しぶしぶ)
意外とすんなりと聞き入れてくれたみたいだ。
――
彩里宅玄関
――
チカ「……まあ、ヘタレだから何もできないか」(デフォ)
なんか小さい声で言っているような気がするがきっと気のせいだろう。
――
シオの部屋
――
チカ「どうぞ」(デフォ)
ここにきてやっと気が付いたが、俺は今、女の子の部屋に入ろうとしているのだ。女の子の部屋なんてお母さんの部屋にしか入ったことはないし、あれは部屋というよりは巣なんだろう。世知辛い世の中である。あとは、見たことがあるのは青い近未来タヌキ合戦に出てくる源さんのお部屋くらいだった。
謎の緊張で手が震える。この先にクラスメイトにそっくりな死体が転がっているのではないかとか考えてしまうのはきっとゲームのし過ぎなのだろう。
――ガチャ。
シキネ「彩里さーん」
入ると、女の子っぽい部屋に折り紙がたくさん飾ってあった。なるほど、まさに彼女の頭の中を覗いているような乙女ちっく理系空間だった。
そして彩里さんはベッドで寝ていた。
シキネ「彩里さん……?」
うわっ! なぜパジャマ? しかもこれはまずい、ちょっと背中が見えちゃっているし、ボタンをちゃんと留めていないがためにヌルヌルっとはだけちゃっているよ! 見ちゃダメだ、見ちゃダメだ、見ちゃダメだ、見ちゃダメだ。
シキネ「彩里さーん、シキネですー。起きてー」
と目を覆いながら言った。ただし、指を閉じると俺の広い視界を隠しきれないような気がしたもんだから、めいっぱい指は開いていた。
シオ「んん……んー、シキネくん? ああ、約束していたんだった」(寝顔)
シキネ「やっぱり忘れていたんだね……じゃあ俺は部屋の外で待っているから、彩里さんは着替えてきてね」
――バタン。
部屋を出た。とたんに中から絶叫。
シオ「きゃあああ! えええ? 痛っ!」(物音)
ドアを少し開けて、彩里さんは顔だけ出した。
シオ「シキネくん……見たの……?」(焦り)
シキネ「大丈夫、ずーっとこうやって目を覆っていたから大丈夫」
シオ「……うう、またやっちゃった。ごめんね……じゃあ待ってて」(残念)
しばらくすると彩里さんが普通に私服で出てきて、客間まで案内された。
――
彩里宅リビングダイニング
――
シオ「どうぞ」(デフォ)
シキネ「失礼します」
シオ「……さっきは変なもの見せちゃって……ごめんなさい」(残念)
シキネ「いや、全然! よかったよ」
シオ「……」(紅潮)
シキネ「……」
互いに顔を赤くした。
シオ「えっと……じゃあ、妹呼んでくるね」(笑顔[閉眼])
妹か……あのツインテ美少女のことだよな……修羅場かな……。
シオ「これが妹のチカです」(笑顔[閉眼])
シキネ「こんにちは」
チカ「ねえ、お姉ちゃん、だからなんでこのヘタレがここにいるの?」(デフォ)
妹さんは華麗に俺の挨拶をスルーなさった。
シオ「あのね、このヘタレが……じゃなかった、このシキネくんが昨日話した人でね、これから化学を教えてあげてほしいの」(真面目)
いやもう、ヘタレでもいいけどさ。彩里さん、どうせなら完全な芝居で信じさせてよ。嘘など無いと思い込ませてくれよ。
シオ「ね、お願い」(真面目)
俺もチカちゃんの方を向いて言った。
シキネ「お願いします」
そして、チカちゃんは彩里さんの方を向いて一言、こうおっしゃるのだ。
チカ「やだ」(デフォ)
……まあ、当然でしょうね。
俺がチカちゃんに口を聞いてもらえるようになるのはまた別の話。

彩里チカ(化学)
私は女優になりたいのC82版のプレイ動画をアップしました。
文字が見にくいと思うので動画をクリックしてニコニコの方で見るといいと思います。
(ステマとか)よろしくお願いします。
近々、「私は女優になりたいのC82版」のプレイ動画を公開したいと思います。
よろしくお願いします。
――
教室
――
[ホームルーム]
シオ「あー、シキネくーん、また一緒だねー」(笑顔[閉眼])
シキネ「お……うっす」
隣のクラスで散々やらかした後、席替えがあった。
シオ「きょろきょろしてどうしたの?」(笑顔[閉眼])
シキネ「あの……白石の新しい席はどこなのかなと」
シオ「くすくす、仲良しだね」(笑顔[閉眼])
席替えの前は名簿順に座っていたから、白石の席が近かった。だけどもう……俺の声はあいつに届かない。俺は悲しくてたまらなかったが、白石は自分の席でガッツポーズをしている。なんだよもう。まあ、白石がむかつくことを置いておけば隣になったのが知人である彩里さんで良かったと思う。
シオ「一年のとき以来だね」(笑顔[開眼])
シキネ「一年のときも一回隣同士になったね、そういえば」
それにしても、うん。彩里さん、綺麗な人だなあ。ちょっと眠たそうなタレ目に往年のボブカット、全体的に丸みを帯びた様相はそう、まさに女性のイメージだった。首筋が……その首筋が……鎖骨が……。さらに性格も良く、頭まで良いんだ。テストではいつも学年トップ5くらいには入っていたかな。一年の頃からその神話を崩すことなく、それでいて実に地味にクラスに溶け込みながらうまくやっているんだから、もう、非のつけどころが無いように見える。
だけど、あれ、彼女に関する浮いた話を全く聞いたことがないけれど、なんでだろう。
シオ「シキネくん、見て見てー」(笑顔[閉眼])
シキネ「ん……何……これ?」
何かの形をした折り紙を渡された。そういえば彼女は折り紙を折るのが趣味なんだっけか。で……何だろう、これは……。
シオ「コーカサスオオカブトのサナギだよ」(笑顔[閉眼])
コーカサスオオカブト。昆虫綱コウチュウ目カブトムシ亜科に分類される3本の長い角が特徴のカブトムシである。アジア最大のカブトムシであり、南米のヘラクレスオオカブトと並び、世界最強のカブトムシとも……。
……そうだった、彩里さんはちょっとだけ変な人だった。
シキネ「サナギとは、目のつけ所がいいね」
シオ「シキネくんにあげるね」(笑顔[閉眼])
……こんな物もらってもなあ。
シオ「そうだ、聞いたよ、シキネくん」(真面目)
シキネ「え、何?」
シオ「スウちゃんに小学生って言ったんでしょ? 駄目だよ、スウちゃん気にしているんだから」(悲しみ)
シキネ「ああ……何故それを?」
シオ「さっき本人から聞いたよ」(デフォ)
シキネ「……あのことは俺も反省しているよ、無鉄砲だった、そして廃人テンションだった」
シオ「でも、どうしてそんな、初対面の女の子に話しかけたりしたの?」(疑問)
シキネ「その、実は俺……」
ありのままを話した。そう……偏差値18のこと、飛び級小学生にすがろうとしたこと……全てありのままに。
シオ「ああ……」(引き)
すごい、これはあれだ。残念なモノを見る目だ。
シオ「すごい……行動力だよね……」(残念)
シキネ「ハハハ……ソウデショウ……」
惨めだなあ、彩里さんの優しさが辛かった。
シオ「うーん……協力しよっか……?」(諦め)
シキネ「え……それはどういうこと……?」
シオ「勉強のこと。シキネくん、誰かに勉強見てもらいたいんでしょ……?」(諦め)
シキネ「うん。今のままじゃ……社会的食物連鎖の底辺へまっしぐらだからね……」
シオ「でもね、私も全教科の面倒を見られるほど勉強ができるわけじゃないからさ、一教科だけ見てあげるよ。あとは、私も協力するけど他の人を探してみようよ!」(真面目)
シキネ「そうか、そうだよね……って、あれ、ちょっと待った! おかしいよ!? 俺は別に全教科を誰かに見てほしいわけじゃなくてっ」
シオ「今が友達を増やすチャンスだよ! シキネくん!」(笑顔[閉眼])
そんなことって……いいのか? 可能であればそりゃあ、女の子たちと……もとい友人たちと楽しく勉強ができるチャンスだ。でも、それって……それって……。
シキネ「それって、俺があまりにもヘタレなんじゃないかな……?」
シオ「うん、もとからヘタレだよ」(笑顔[閉眼])
[消音]
シキネ「……決めたぞ! 探すぞ! 勉強できる人を! そしてすがって、すがって、大学に合格するんだぜ!」
シオ「やったね! 潔いね!」(笑顔[閉眼])
最初から、自分の体裁なんて気にする方が無駄だったんだ。彩里さんの客観的で説得力のある助言とその笑顔に後押しされて、俺は……大切なまがい物を捨てる決心がついた。
シオ「ああ……それとね、スウちゃんとはね、ちゃんと謝って仲良くなってほしいな。私からも言っとくからさ」(残念)
シキネ「そうなのか……わかった。じゃあ、とりあえず数学はスウで決まりかな?」
シオ「……あれ? スウちゃんは呼び捨てなんだね。」(笑顔[閉眼])
シキネ「なんか、こう、スウーっとね……」
シオ「……」(笑顔[閉眼])
シキネ「……」
シオ「よし、じゃあ頑張ろうか!」(笑顔[閉眼])
シキネ「どーい!」
なんだろう、この人の笑顔が少しずつだけれど笑顔に見えなくなってきた……。
このあと少し話し合った末、彩里さんには物理を見てもらうことになった。
――
電車
――
帰りの電車はなかなか混雑していた、俺は座れたけど。見ると、目の前に可愛いツインテールの女の子が立っている。おっと、目が合ってしまった。互いにすぐに目を反らす。手持ち無沙汰なのでケータイをいじってみることにする。えーと、カメラ、カメラ。駄目だ、画質があんまり良くなくって盗撮は難しそうだ。
うーん、というか、こういう時に勉強すればいいんだろうな、きっと。まあ、明日からやろう、そうしよう。
それにしても結構可愛い女の子だったなあ……ジロジロ見るのは変態だから、チラチラと見ることにしよう。俺は2秒おきに次の駅を確認するフリをして彼女を見上げた。
そんなことをしばらく続けていると、なんだろう、彼女が身体を震わせていることに気が付いた。ツインテの美少女は恥ずかしそうに目を泳がせた末に、こちらの方を向いた。いや、そんなに見つめられても席は譲らないぞ、早いもの勝ちだろ。ん、「た……す……け……」いやいや、そんな、俺には唇も空気も読めないしさ、勝手に早とちりするのも良くないよな。良くないけど……。
あれ……もしかしてこの子、痴漢されているのかな?
えっと……。
どうしよう……。
こんなときはそう……!
・勇気出して助ける!
・Vitaを取り出す!
・3DSを取り出す!
[Vitaを選択]
Vitaだよなあ、やっぱり。そもそも、痴漢に見えて痴漢じゃないかもしれないし……。
??「……んんっ」(凌辱)
声がしたのでまた見上げてみると、まさぐり攻撃が続いているようだった。ああ、これは……なんだかえっちいぞ。
……そうじゃなくて!
・今度こそ助ける!
・今度こそ3DS!
[3DSを選択]
タッチ、タッチ、えーい、タッチだ。
うん、きっともうすぐ止めるんじゃないかな、そろそろ堪能したでしょう? そうだね、きっとそうだね。
てか、俺の駅次だもんね。まあ、さよなら、名前も知らない美少女ということで……。
??「……はぅっ」(凌辱)
なんだか、終わる気配がしない……。
女の子は顔を真っ赤にしながら俯いてしまった。すごく恥ずかしそうだ。
頑張れ! もう少しだ! もう少しで駅だ! (俺の)
――
町
――
そんな感じで状況が全く好転しないまま駅に着いてしまった。
シキネ「うーん、正直、いいもん見れたっす」
という感じでニヤつきながら改札を出た。
[ツインテ美少女出現]
シキネ「あ」
さっきの子だ、目が合った、しかも「あ」って言ってしまった。
??「……」(不満)
何か言わなきゃ、何か言わなきゃ……。
シキネ「さ、さっきは痴漢……大変だったね」
……!!!
まずい、これでは見て見ぬフリをしていたことがバレバレじゃないか!?
女の子は一瞬驚いた顔をしたあと、すぐに顔をしかめた。
??「早めに死ね」(不満)
ツインテ美少女はそう一言吐き捨てて去っていった。
ああ、俺はなんて罪深い男なのだろう。ツインテ美少女一人助けることも出来ず、勉強も出来ず、嘘をつくことも出来ない。
ああ、神様……もしいるのなら教えてください。
俺に出来ることって何ですか……避妊ですか、そうですか……。だけれど、そもそもそこまで持ち込むことさえ出来ないのでしょう? ええ、知っていますよ。
だから俺は、今日も家に帰るだけなんです。
――
自宅
――
今日はなんだか散々だったなあ。
飛び級小学生からはすげえ綺麗なローキック食らうし、彩里さんには残念な顔をされるし、ツインテ美少女には悪いことしたし……。
まあいいや、こんな日は寝てしまおう。
あ、勉強は……まあいいや、明日からやろう。
俺はこの日、今後の人生の隅々にいたるまでをぐるぐるに変えてしまうようなローキックを食らっていたことなど知る由もなく、身体を休めたのだった。
全ての物語はこの日に起因するのだろう。
それはまた別の話。

彩里シオ(物理)
――4月8日(水)
――
教室
――
シキネ「なあ……この18ってやつ何? 俺まだ17なんだけど」
白石「ああ……それはお前の偏差値だな……」(真顔)
シキネ「えっ……偏差値って歳と関係あったの!?」
白石「いや、ねえよ」(真顔)
シキネ「そうか、よかった……」
白石「いや、よくねえよ」(真顔)
――高校三年生の春。
しょっぱなに返ってきた模試を眺めて、ああ、これは俺の点数なんだ、業者に「君の学力の偏差値は18ですよ」と言われているんだ、ということになかなか実感をもつことができないでいた。
――高校三年生の春。
せめて、理系なんだから数学ができるようになりたい。その頃の俺には数学に対する関心も、理解も、実力も無かった。
シキネ「あーあ、どっかに数学教えてくれる人いないかなー」
白石「実はお前の通っている高校にはな、数学教師といって数学を教えることを生業としている人がいてだな……」(真顔)
シキネ「違うんだよ、なんていうか、先生じゃ駄目なんだよ。大人は怖いんだよ。大人をなめるなよ」
白石「……そういや、5組に『飛び級小学生』って呼ばれている数学がめっちゃ出来るちびっ子いただろ、そいつでいいじゃん」(真顔)
シキネ「わかった、任せろ、『飛び級小学生』だな」
白石「いやでも、本人はそのあだ名で呼ばれるのをすごく嫌がってるらしいから気をつけろよ」(真顔)
シキネ「嫌がってるんだな、わかった、任せろ」
――
廊下
――
やった、ついに俺の数学に光が差し込んだ。このときの俺はただただ嬉しく、廃人のようなテンションになって舞い上がっていたんだ。
俺は走った。全力で走った、隣のクラスまで。隣のクラスまで走っただけなのに息が切れた。ハアハア、待ってろよ……飛び級小学生……ぐふふ……飛び級小学生!!!!
5組のドアを開け、廃人テンションのまま、息を切らし、目に血をたぎらせて、大声で叫んだ。
――
教室
――
シキネ「すみません! 飛び級小学生さんはいますか!?」
瞬間、休み時間の教室の喧騒は絶対零度の眼差しへと変わった。
――しいいいぃぃぃいぃまったあああ! 言っちゃったあああぁあぁあああああぁ!!
凍った教室の中で、唯一動き出した少女がコツコツと小綺麗な足音を立ててこっちへやって来た。
??「それ、たぶん私のこと……かな?」(デフォ)
サラリと伸びた長髪、凛とした目鼻立ち、それらにちょっとアンバランスなちっこい身長。笑顔が可愛らしい。
シキネ「おお、君が……」
と、ここまで言って気付いたが、俺は彼女の本名を知らなかった。
シキネ「……飛び級小学生さん……ですかぁ」
??「……」(笑顔)
また言っちゃった……。
そしてこのときもう一つのことに気が付いた。そう、彼女は笑っているが、笑いながら怒っている……。
??「ちょっといいかな……?」(笑顔[怒り])
シキネ「はい」
俺は背筋を正して、青く、どこまでも広がる窓の外に明日を探した。
??「ウチの学校に飛び級制度なんてねぇよっ!」(不満)
――綺麗なローキックだった。
~OPテーマ
「みにまむ・こんぷりへんじょん」
あかほん!
~

スウ(数学)
というわけであかほん!を連載していきます。
注意
・ゲームのシナリオなので
スウ「〜〜〜」(デフォ)
みたいに色々な指示記号がついていたりしますがあんまり気にしないで下さい。
それでは随時投下。
追記)もうちょいかかりそうです 19:11
みなさん
あかほん!って知っていますか?
たぶんこのサイトにやってきている人のうち5人くらいは知っているかと思います。
そうです、大学受験を題材にしたギャルゲーです。
というか、このあいだなんか集合絵とかなんかがはっつけてあったと思います。
もう一回貼付けましょう。
実はこれ、自分が受験生をやっていた頃から楽しく書いていたのですが、今回、現在製作中のノベルゲーム
「私は女優になりたいの」(押すと飛びます)のPR活動の一環ととしてこのサイトを盛り上げるために……
あかほん! のシナリオを連載することが決定しました。
—あらすじ—
高校三年生の春
返却された模試をみてシキネは唖然とする
「……偏差値18……?」
これはやべえ、勉強しないとやべえって感じで女の子がいっぱい出てくるお話。
そういうわけで明日から週1くらいのペースで連載していこうと思います。
明日は第0話と第1話を一気にお届けする予定です。
それではみなさん
これ読んだら勉強しよう。
みなさん聞いて下さい。これが僕の黒歴史の発端であります。
たしか中二のときに録音した曲です。
最初にギターだけ録って、即興で歌を入れました。
即興なので歌詞の意味がよくわかりません。
粗い歌シリーズは6まで存在するので今後アップしていこうと思います。
※この曲を聞くとむず痒くなるかもしれないので苦手な方は逃げ帰って下さい。
どうも。あかほん! でキャラクターを描かせてもらってます、
Terrain(てらん)と申します。
初めてブログというもので記事を書くので若干緊張してます。
ようやく あかほん! メインキャラクターたちのデザインが固まったので集合絵にしました。

当方まだまだ未熟なため線が汚かったり、色が一色ベタだったり……精進します。
ちなみにスウちゃんが一番よく描けたと思います!
スウちゃんかわいい(*´ω`*)遅筆ですがこれからもがんばってお手伝いしていこうと思います!
あ、もしよかったら私のpixivページ
投稿数少ないですが にも立ち寄ってみてくださいね。
こちらからどうぞ。ではノシ
カウンタをつけた記念に絵を載せます。

嘘をついてはいけないということなのでしょうか。